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インタビュー INTERVIEW 
12月9日(土)からシネスイッチ銀座ほかで公開
マルタン・プロヴォ監督、カトリーヌ・ドヌーヴ×カトリーヌ・フロW主演の『ルージュの手紙』
来日したカトリーヌ・ドヌーヴが、本作ほかを語る
オフィシャル・インタビュー           
『セラフィーヌの庭』、『ヴィオレット ある作家の肖像』と実在の女性を主人公に、奥の深い人間ドラマを送り出してきたフランスのマルタン・プロヴォ監督。
新作は助産婦として堅実な人生を送る女性(カトリーヌ・フロ)と、彼女とは対照的に刹那的に気ままな人生を歩んできた継母(カトリーヌ・ドヌーヴ)、ふたりの女性の物語。ある日唐突に継母のベアトリスが娘のクレールに連絡を取ってきたことから物語は展開してゆく。初めはベアトリスを母として受け入れることのできないクレールだが、お互いの心の隙間を埋める形でふたりの距離感は縮まってゆく。原題はずばり「助産婦」(SAGE FEMME)。
来日したカトリーヌ・ドヌーヴが本作のこと、そして本作以外のことも少し語った。                        (2017年11月18日 記)
   
        (CRyuji Hashimoto

<自由奔放に生きるベアトリス>

わたしが演じたベアトリスは非常にエネルギーのある人物です。好奇心旺盛でなんでもやってみるというタイプ。人生をとことん生きており、過去に愛してきた男性、賭博、タバコ、アルコール、食欲など、とにかくあらゆることに全力でエネルギーを使う女性。わたし自身、エネルギーを必要とする役柄だと思いました。
彼女は余命いくばくもないことを知るわけですが、いままで通りの生き方を貫きいっさい後退しない。落ち込むということなしにどんどん進んでゆくすごくエネルギッシュな役柄です。

© photo Michael Crotto This is the photo credit.

<ベアトリスという女性に憧れる部分はあるか >

愛着はありますけど、憧れは全然ないです(笑)。結果を考えずにとにかくいまを生きているという人なので、すごくエゴイストですが、なんかこう憎めない。そういうところがいいと思いますし、彼女の生き方というのは昨日は昨日、今日は今日といった感じでほんとにどうなるかわからない。枝に止まっている鳥のようにその日を生きている感じがします。
ベアトリスのセリフでシナリオを読んだときに笑ってしまったのが、子どもについて話している時の言葉。強がっているのかもしれませんが、「子どもは欲しいと思ったこともなかったし、子どもがいなければ自分の面倒だけみればいい。でも年を取ったら子どもがいたほうが便利なこともあったかもしれない」というセリフは非常に可笑しかったです。

<ふたりのカトリーヌ。W主演となったカトリーヌ・フロのこと>

今回に限りませんが、映画をつくるとなると撮影だったりリハーサルだったり結構一緒に過ごすことが多くなり、共演者とは近い存在になります。今回カトリーヌ・フロと一緒に過ごしてみてわかったのは、彼女は内に秘めたものを持っているということ。そして現場では非常に役柄に集中していました。
彼女が演じたクレールとわたしが演じたベアトリスは対照的な存在であり、そこが魅力でもありました。


© photo Michael Crotto This is the photo credit.

<自らの死を感じて娘に会いに行くベアトリス>

ベアトリスは自分にとって何が大切かとかそういうことで行動しているわけではありません。ただ単に自己中心的な人なので、自分の余命が少ないと知りひとりでいるのが怖くなる。だれかに頼りたいというエゴから、ああやって突発的に連絡をとってきたということです。彼女はその日その日を生きていて、うしろを振り返ることがない人間ですから。

<マルタン・プロヴォ監督が書いた脚本の魅力>

今回のシナリオで魅力を感じたのは、そこに描かれている人物たちでした。完成した映画を観ても、シナリオで読んだときに想像していた人物たちがきちんと描かれていました。人物像が非常に面白いというのがいちばん気に入ったところです。登場人物がとても人間的で、センチメンタルな部分もあればイキイキもしている。今回仕上がった映画を観て感じたのは、シナリオを読んだときに好きと感じた人物像がそのまま反映されていたことです。
毎回シナリオ通りに映画が完成するとは限りません。でも今回に関しては、ほんとうにシナリオを読んで想像していた通りの作品になっていました。しかも時々素敵なサプライズがあって、シナリオ以上に良くなったと感じるところもありました。なかには撮影中どうなってしまうんだろうという作品もありますが、仕上がって観たら良かったということもありました。たとえばフランソワ・トリュフォー監督の『終電車』。撮影現場は大変でしたけれど、出来上がってみればすごく良かったという例です。

<作品選びについて>

シナリオが気に入ることももちろんですが、監督に魅力があるかどうかも大きなポイント。いま自分がやっているそういう選択は25歳のときにはやっていなかったと思います。自分が共感できるシナリオだったり監督だったり、作品選びに一貫性があるというよりは、その時々に自分が共感できるものを選んできました。
シナリオは自分が演じる人物だけではなく、その周りの人物も面白く描かれているかが決め手になります。
プロヴォ監督の作品は『セラフィーヌの庭』を観てとても気に入りました。 一概には言えませんが、作品を観て監督に会ってみたいなと思うこともあれば、偶然の出会いでご縁が出来たということもあります。

<俳優という仕事の面白さ、喜びについて>

トリュフォーの言葉を引用すれば「喜びであると同時に苦しみである」ということだと思います。
想像上の人物に命を吹き込むことは非常に面白いこと。自分の人生で経験しないようなことを役柄で経験することもできます。自分でないだれかを演じるという面白さがこの仕事にはあります。
わたしの家は大家族できょうだいは4人姉妹でした。両親も俳優でしたが親は親、子どもは子どもでそれぞれ独立していたのでとくにに演技の面で教えてもらったということはありません。
自分のキャリアの中では、『シェルブールの雨傘』のジャック・ドゥミとの出会いがわたしに影響を与えています。彼は普遍的な独自の世界観を持った監督だったと思います。
何歳まで女優を続けるかはとくにに決めていません。面白いシナリオがあって縁があれば、ずっとやり続けていきたいと思っています。

<オフのとき>

撮影中にできないことをやりたいので、オフのときには友だちに会うこともあれば映画館に足を運んで映画を観ることもあります。多くの役者がそうだと思いますが、撮影中でなくても映画のために何かをやっていることもあります。
                                                              


                                 ルージュの手紙
                                 SAGE FEMME

■Staff&Cast

監督/脚本:マルタン・プロヴォ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/カトリーヌ・フロ/オリヴィエ・グルメ/カンタン・ドルメール/ミレーヌ・ドモンジョ
2017年フランス(117分)
配給:キノフィルムズ/木下グループ
原題:SAGE FEMME
2017年12月9日(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
© photo Michael Crotto

■カトリーヌ・ドヌーヴ CATHERINE DENEUVE

1943年、フランス・パリ出身。姉は女優の故フランソワーズ・ドルレアック。ロジェ・ヴァディム監督との間に俳優のクリスチャン・ヴァディム、俳優のマルチェロ・マストロヤンニとの間に女優のキアラ・マストロヤンニ、ふたりの子どもがいる。 十代の頃から映画に出演し、ヴァディム監督『悪徳の栄え』(62年)で注目を集め、ジャック・ドゥミ監督のミュージカル映画『シェルブールの雨傘』でブレイク。ヴァディムやドゥミのほかにフランソワ・トリュフォー、ロマン・ポランスキー、ルイス・ブニュエルなど名だたる監督の代表作に出演。数々の映画賞にも輝いている。





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